トップ >> 海外勤務者の健康管理 >> 海外感染症流行情報

海外感染症流行情報 2022年3月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

・全世界:新型コロナウイルスの流行状況

3月になり新型コロナウイルスの感染者数は世界的に減少傾向にありますが、東アジアや東南アジアでは増加しています(WHO Corona virus disease 2022-3-23)。とくに韓国、香港、ベトナムなどで増加が顕著です。また、西ヨーロッパでもドイツ、英国、フランスなどで流行の再燃がみられています。いずれもオミクロン株の流行によるもので、重症者や死亡者の数は少なくなっています。なお、オミクロン株の中でも感染力の強いBA.2が世界各地で増えていますが、重症度やワクチンの効果は今までのBA.1と大きな違いがないようです。
日本では2月初旬をピークに感染者数が減少しており、オミクロン株発生にともない強化されていた水際対策も3月から緩和されました。入国前の検査、入国時の検査、入国後の健康監視という流れは今までと同じですが、健康監視期間が入国後の検査で陰性なら短くなります。詳細は厚生労働省検疫所のホームページをご参照ください。
水際対策に係る新たな措置について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00209.html

・アジア:中国での鳥インフルエンザ患者発生

中国でH5N6型鳥インフルエンザの患者発生が続いています。この1か月は中国南部(福建省、広西省、四川省、江蘇省、江西省)で7人の患者が発生しており、いずれも重症です(香港衛生局CHP 2022-2-28,3-8,15)。今年の累計患者数は10人で、H5N6型の患者が初めて確認された2014年以来では74人になります。なお、現在までの患者は家禽からの感染で、ヒトからヒトへの感染は起きていないようです。

・アジア:東南アジアでのデング熱流行状況

今年の東南アジア各国でのデング熱患者数は例年並みか少なめになっています。3月上旬までにマレーシアでは6000人、フィリピンとベトナムで5000人、シンガポールで1000人の患者が確認されました(WHO西太平洋 2022-3-10)。一方、東チモールでは今年になり3000人以上のデング熱患者が発生し、例年よりも大幅に増加しています(Outbreak News Today 2022-3-12)。

・大洋州:オーストラリアで日本脳炎流行が発生

今年に入りオーストラリア南東部を中心に日本脳炎の患者が発生しています(英国NaTHNaC 2022-3-16)。3月中旬までに18人の患者が確認されており、高齢患者の死亡も報告されています。地域としてはニューサウスウエールズ州やビクトリア州で発生が多く見られます。オーストラリア大陸では日本脳炎の流行が今まで報告されておらず、今回が最初の流行になります。

・中東:イスラエルでポリオ患者発生

イスラエルのエルサレムで3月上旬にポリオ患者が1名確認されました(ヨーロッパCDC 2022-3-11)。患者は3歳の女児で下肢の麻痺を起こしていました。また、この患者の周辺で1名の無症状感染者が確認されています。検出されたポリオウイルスはワクチン株由来の3型で、イスラエルでは30年ぶりのポリオ患者の発生になります。  

・ヨーロッパ:ウクライナ難民の感染症リスク

ロシアによるウクライナ侵攻により、ポーランドなど周辺諸国で難民が増加しています。難民は体力を消耗しているとともに、過密な状態で生活しているため、収容施設などでは新型コロナやインフルエンザなど飛沫感染症の流行が起こりやすくなります。また、ヨーロッパCDCは、ウクライナで元々流行している麻疹、ポリオ、結核、HIV感染症などが周辺諸国に拡大することを懸念しています(ヨーロッパCDC 2022-3-8)。今のところ難民の間で大きな流行は起きていませんが、難民にワクチン接種や治療などを提供するともに、周辺諸国では感染拡大の監視を強化する必要があります。  

・アフリカ:ケニアで黄熱が流行

ケニア・ナイロビの北部にあるIsiolo郡で、1月から黄熱患者が15人確認されました(WHOアフリカ 2022-3-15)。このうち4人が死亡しています。ケニア国内では1995年以来の流行で、全土に流行警報が発令されました。ケニアに滞在する際には黄熱ワクチンの接種を強く推奨します。