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海外感染症流行情報 2015年3月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

欧米諸国での麻疹流行

今年はドイツのベルリンで2月下旬までに600人の麻疹患者が確認されました(Europe CDC 2015-3/2)。これは昨年10月から旧ユーゴスラビア難民を中心に発生していた流行が拡大したものです。米国でもカリフォルニア州を中心に3月中旬までに176人の麻疹患者が発生しました(米国 CDC 2015-3/13)。このうち130人は昨年12月、カリフォルニア州のデイズニーランドで発生した流行に関連した患者です。
このように今年は欧米諸国での麻疹流行が相次いで報告されていますが、途上国でも麻疹は常時流行しています。日本では20歳代後半~30歳代の世代で麻疹の抵抗力が弱いとされており、この世代が海外に長期滞在する際には麻疹ワクチンの接種を受けておくことを推奨します。

サウジアラビアでMESR(中東呼吸器症候群)の患者数増加

サウジアラビアでは2月8日~3月10日までに90人(25人死亡)のMERS患者が確認されました(WHO Global Alert and Response 2015-2/23, 2/26, 3/6, 3/11, 3/20)。患者の発生場所は首都リヤドが41人と最も多くなっています。感染経路としては、病院内での患者との接触が疑われるケースが40人で、ラクダとの接触が9人でした。今後もサウジアラビアなど中東に滞在する際にはMERSの感染に十分注意する必要があります。

東南アジアでのデング熱流行状況

今年はマレーシアでデング熱の患者数が2万人を越えており、昨年に比べて46%の増加になっています(WHO西太平洋事務局 2015-3/10)。患者数が多いのはクアラルンプル周辺のSelangor州で、日本からの滞在者も多い地域です。なお、シンガポールでは昨年よりも患者数が少なく、ベトナムではやや多い数になっています。タイでも2月末までに3,700人のデング熱患者が確認されており、バンコク近郊のRayongやSamutなどで患者数が増えています(Fit For Travel 2015-3/9)。

エジプトで鳥インフルエンザA(H5N1)の患者数が増加

エジプトでは昨年末より鳥インフルエンザA(H5N1)の患者数が増加していますが、1月末から2月末までに66人の患者(13人死亡)が発生しました(WHO GAR 2015-3/3)。患者の発生場所は中部エジプトの広い範囲で、ほとんどの患者が発症前に家禽と接触していました。同国で短期間にこれだけ多くの患者が発生したことは過去にありませんが、WHOによればウイルスに大きな変異は見られていないとのことです。

中国での鳥インフルエンザA(H7N9)の流行

中国では今年も2月に鳥インフルエンザA(H7N9)の患者数が増加しました(WHO GAR 2015-3/11)。1月21日~2月25日に確認された患者数は59人で、うち17人が死亡しています。地域別では広東省(35人)や浙江省(11人)で患者発生が多くみられます。8割以上の患者が発症前に家禽と接触していました。今年の患者数は昨年同時期よりも少なくなっていますが、3月に香港の研究者が発表したデータでは、このウイルスはヒトに親和性があり、今後、パンデミックをおこす可能性があるとのことです(Nature 201503/12)。

カリブ諸国でのコレラ流行

カリブ海のハイチでは2010年の大地震以来、コレラの流行が続いており、73万人の患者が発生しました。2015年も2月末までに7,000人以上の患者が確認されています(Pan American Health Organization 2015-3/3)。隣国のドミニカでも2015年は首都のサントドミンゴなどで100人近い患者が発生しています。両国とも昨年同期に比べて患者数が増えている模様です。

海外感染症流行情報 2015年2月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

中国で鳥インフルエンザA(H7N9)の流行が再燃

中国沿岸部で2月に入り鳥インフルエンザA(H7N9)の患者が増加しています。中国では2013年から2月の春節前後にこの病気の患者が増加しており、今季は2月上旬までに114人の患者(致死率24%)が確認されました(Europe CDC 2015-2-12)。この数は昨季(319人)より少なくなっていますが、これから患者数が増加する可能性もあります。今季は広東省や福建省で患者発生が多く、ほとんどの患者は発病前に生きた家禽との接触がありました(WHO GAR 2015-2-8)。
なお、1月末にカナダのバンクーバで、中国旅行から帰国したカナダ人夫婦がH7N9による急性呼吸器症状を起こしていたことが明らかになりました(WHO GAR 2015-2-1)。二人とも重症化することなく回復しています。

北半球での季性インフルエンザ流行

北半球での季節性インフルエンザの流行は2月中旬になり鎮静化の傾向にあります(WHO influenza update 2015-2-9)。今季は欧米や日本などでA香港型(H3N2)が大流行し、ワクチンが効かないタイプのウイルスが数多く検出されました。一方、インド北部ではA(H1N1)型の流行がみられています。このウイルスは2009年に流行した新型インフルエンザのウイルスが季節性として定着したもので、病原性の高いウイルスではありません。

中東でのMERS流行

サウジアラビアでは今年もMERSの患者発生が続いており、2月中旬までに患者数は100人以上に達しています(ミネソタ大学感染症センター 2015-2-20)。この数は昨年同期の約2倍で、患者の多くはラクダとの接触や病院内で感染した模様です。昨年は4月に患者数が大きく増加しており、今後も警戒が必要です。

西アフリカのエボラ熱の流行は鎮静化

西アフリカで流行しているエボラ熱の流行は2月になり鎮静化の傾向にあります。2月中旬までの患者数は23,253人で、うち9,380人が死亡しました(WHO Global Alert and Response 2015-2-18)。最初に流行が発生したギニアでも患者数は少なくなっていますが、東部のコートジボアール国境付近で新たな流行が確認されており、引き続き警戒が必要です。

米国での麻疹流行

米国でカリフォルニア州を中心に麻疹の流行が発生しており、1月からり2月上旬までに121人の患者が確認されました(WHO GAR 2015-2-13)。今回の流行は、ロサンゼルスのディズニーランドで12月におきた集団感染が全米に波及したものです。患者からはフィリピンで流行しているB3型のウイルスが分離されています。

ブラジル・サンパウロでのデング熱流行

ブラジルのサンパウロでは1月にデング熱患者が増加し、緊急事態警報が発出されました(外務省海外安全ホームページ 2015-2-20)。1月の患者数は1万7,000人にのぼっており、昨年同期の患者数(2,000人)より大幅に増加しています。サンパウロでは1月から2月にかけて雨季になるため、患者数はさらに増えることが予想されます。

中南米でチクングニア熱流行がさらに拡大

中南米では昨年、チクングニア熱の大流行が発生しましたが、今年も流行が続いています。2月中旬までの累積患者数は117万人に達しており、ドミニカ(53万人)、コロンビア(14万人)、エルサルバドル(13万人)で患者数が多くなっています(Pan American Health Organization 2015-2-13)。米国でも輸入例が2000人以上確認されており、フロリダ州では国内感染例が発生しました。

海外感染症流行情報 2015年1月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

中国で鳥インフルエンザA(H7N9)の患者数が増加

中国沿岸部では冬の到来とともに、鳥インフルエンザA(H7N9)の患者が増加しています。WHOの報告では2014年12月下旬から2015年1月中旬にかけて27人の患者が確認されました(WHO Global Alert and Response 2014-12-24、2015-1-19)。患者発生は福建省、江蘇省、浙江省、広東省など南部で多くみられています。香港でも今季2人の患者が確認されていますが、いずれも広東省を旅行中に感染した模様です(WHO GAR 2014-12-30、香港衛生局 2015-1-23)。中国はこれから春節で人の移動が活発になるため、患者数はさらに増加することが予想されます。
鳥インフルエンザA(H7N9)は生きた家禽を販売している市場で感染するリスクがあります。流行地域に滞在中は、こうした市場に立ち入らないようにするとともに、鶏肉や鶏卵は加熱してから食べるようにしましょう。

シンガポールでのデング熱流行

シンガポールでは2013年にデング熱の大流行がみられましたが、2014年も年間患者数が1万8000人に達しました(WHO西太平洋事務局 2015-1-13)。患者の発生は国内各所でみられており、とくに建設工事現場の周囲で多くなっています。これは水溜りができやすく、蚊の発生に適しているためです。季節的には、雨の多い1月~2月や気温の高い6月~8月に患者数が増える傾向にあります。なお、2014年のデング熱による死亡者数は4人で、致死率は0.02%でした。シンガポールのように高度な医療が受けられる国では、デング出血熱をおこしても致死率をかなり低くすることができます。

欧米諸国でインフルエンザ流行がピークに

欧米諸国では1月になり季節性インフルエンザの本格的な流行が発生しています(WHO influenza update 2015-1-12、ECDC 2015-1-12)。今季はウイルスのタイプとしてA香港型(H3N2)が大多数を占めており、高齢者などでは重症化する可能性があります。また今季の香港型の70%はワクチン株と抗原性が異なっており、ワクチン接種者でも感染するケースが数多くみられています。一方、抗インフルエンザ薬は、ほとんどのウイルスに有効です。 日本でも季節性インフルエンザの流行がピークになっていますが、今季はワクチンを接種していても、手洗いやウガイなどの基本的な予防対策を実践する必要があります。

エジプトで鳥インフルエンザA(H5N1)が再燃

エジプトで2014年11月中旬からに鳥インフルエンザA(H5N1)の患者が増加しており、2015年1月までに患者数は54人に達しました(WHO GAR 2015-1-6, ProMED 2015-1-23 )。 1月だけでも25人の患者が発生し、うち8人が死亡しています。エジプトで短期間にこれだけ多くの患者が発生したことは今までにありません。A(H5N1)の流行は2000年以降、東南アジアやエジプトで発生していましたが、ここ数年は患者発生がほとんどみられていませんでした。エジプトでは最近になり家禽の間でA(H5N1)の流行が拡大しており、これがヒトに波及した模様です。WHOは「今のところウイルスに大きな変化はない」と発表していますが、暫くは厳重な警戒が必要です。

西アフリカのエボラウイルス病は鎮静化傾向

西アフリカを中心に流行しているエボラウイルス病の累積患者数は、1月18日までに21,724人(死亡8,641人)に達しました(WHO Global Alert and Response 2015-1-21)。ギニア、リベリア、シェラレオネでは患者発生が引き続きみられていますが、発生数は三カ国とも減少傾向にあります。また、マリが1月中旬に流行の終息を宣言しました。西アフリカでの流行は全般的に鎮静化傾向にありますが、今後も流行は続くものと予想されます。

中東呼吸器症候群と鳥インフルエンザA(H7N9)が二類感染症に追加

中東呼吸器症候群(MERS)と鳥インフルエンザA(H7N9)は、感染症法の指定感染症として扱われてきましたが、厚生労働省は2015年1月21日付で二類感染症に追加しました。患者発生時の対応などについては、今までと大きな違いはありません。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dl/20150121_01.pdf
なお、中東呼吸器症候群については、最近1カ月の間もサウジアラビア、ヨルダン、オマーンなど中東諸国で患者発生が報告されています(WHO Global Alert and Response 2015-1-5,15, 16,20)。

海外感染症流行情報 2014年12月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

西アフリカでのエボラウイルス病の流行

西アフリカを中心に発生しているエボラ熱の累積患者数は、12月14日までに18,603人(死亡6,915人)に達しました(WHO Global Alert and Response 2014-12-17)。
ギニア、リベリア、シェラレオネでは患者発生が引き続きみられていますが、発生数は減少傾向にあります。また、マリなど近隣国での新たな患者発生も報告されていません。
全般的に西アフリカでの流行は鎮静化の傾向にありますが、今後も十分な警戒が必要です。

中南米でチクングニア熱患者数が100万人突破

昨年末から中南米のカリブ海地域を中心に流行しているチクングニア熱の患者数は、12月中旬までに100万人を突破しました(Pan American Health Organization 2014-12-19)。
患者数が多い国はドミニカ(52万人)、エルサルバドル(13万人)、ハイチ(6万人)、コロンビア(5万人)などで、この1カ月はグアテマラで2万人の患者数増加がみられています。米国では輸入例が2,000人以上確認されていますが、国内感染例は11人に留まっています。
チクングニア熱はネッタイシマカに媒介される感染症で、デング熱に類似の症状をおこします。今年は南太平洋のタヒチやサモアなどでもチクングニア熱の流行が報告されています(WHO 西太平洋支部HP 2014-12-7)。
こうした流行地域に滞在する際には、蚊に刺されないようにご注意ください。

米国でインフルエンザ流行拡大

米国では12月になり29の州でインフルエンザの流行がみられています(CDC Flu View 2014-12-9)。検出されたウイルスの種類はA(H3N2)型が多くなっていますが、このうちの7割近くが今年のワクチン株とは異なるタイプのウイルスになっています。このため、今シーズンはインフルエンザの流行が例年になく拡大する可能性があります。なお、ヨーロッパではまだ本格的な流行が始まっていませんが、この地域で今シーズン検出されたA(H3N2)型についても、ワクチン株との相違が報告されています(ECDC 2014-12-22)。
日本でも12月からインフルエンザの流行が始まり、米国と同様にA(H3N2)型の検出が多くみられていますが、ワクチン株との相違は明らかになっていません。
http://www.nih.go.jp/niid/images/iasr/rapid/inf1/2014_51w/sinin1_141218.gif

中国での鳥インフルエンザH7N9の流行状況

中国では2013年から沿岸部を中心に鳥インフルエンザA(H7N9)型の患者が発生しており、気温の低下とともに患者数が増える傾向にあります。 今年も10月以降、患者発生がみられていますが、まだ大きな流行にはなっていません。 12月は7人の患者が報告されており、発生地は新疆ウイグル自治区4人、浙江省2人、江蘇省1人でした(ミネソタ大学感染症センターHP 2014-12-22)。
今年の傾向として内陸部にある新疆ウイグルでの発生数が多くなっているようです。中国はこれから本格的な冬の季節を迎えるため、この感染症の発生状況には十分な注意をする必要があります。

中東でのMERSコロナウイウルス感染症の流行状況

サウジアラビアではMERSコロナウイウルス感染症の患者が12月も発生しており、この病気が国内で常在化している模様です。11月20日~12月7日には11人の患者が確認されていますが、発生場所は全土におよび、感染リスク(既に診断された患者や動物との接触)が明らかでない患者もみられます(WHO Global Alert and Response 2014-12-17)。
サウジアラビアなど中東諸国に滞在する際には、ラクダなどの動物や呼吸器症状のある患者との接触をできるだけ避けるようにしましょう。

エジプトで鳥インフルエンザH5N1の患者発生

2003年より鳥インフルエンザA(H5N1)型の患者が東南アジアやエジプトで報告されていますが、今年の11月にもエジプトで8人の患者(5人死亡)が確認されました(WHO Global Alert and Response 2014-12-4)。このうち6人は同国中部のMenia県で発生しており、5人は成人でした。
鳥インフルエンザH5N1の患者発生は一時より減少していますが、いまだに致死率の高い感染症であり、流行地域に滞在中は家禽に近づかないなどの注意を心がけてください。

海外感染症流行情報 2014年11月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

西アフリカでのエボラ熱流行

西アフリカを中心に発生しているエボラ熱の累積患者数は、11月18日までに15,351人(死亡5,459人)に達しました(WHO Global Alert and Response 2014-11-21)。このうちギニア、リベリア、シェラレオネで15,319人の患者が確認されています。ギニア、リベリアでの患者発生は11月になり鎮静化の傾向にありますが、シェラエオネでは首都のフリータウンなどで引き続き多くの患者が発生している模様です。 また、隣国のマリでもギニアからの輸入例を起点にして6人の患者が発生しました。一方、欧米諸国では新たな輸入例の報告はありません。
西アフリカでは今後もエボラ熱の流行がつづくものと予想されますが、ギニア、リベリア、シェラエオの3か国への渡航はできるだけ自粛しましょう。もし、これらの国に滞在した場合は帰国後に検疫所に申告し、健康監視などの措置に従ってください。

中国で鳥インフルエンザH7N9が再燃

中国では2013年から沿岸地帯を中心に鳥インフルエンザH7N9の患者が発生しています。2014年は春以降、患者発生が終息していましたが、10月中旬より5人の患者が江蘇省(常州)、新疆ウイグル自治区、北京で確認されました(WHO GAR 2014-10-29, 11-18)。この病気は気温が低下すると患者数が増える傾向にあり、これから先、十分な注意が必要です。生きたニワトリを販売している市場などに立ち入らないようにしましょう。

アジアでのデング熱流行状況

中国の広東省で7月から発生していたデング熱の流行は次第に鎮静化しています。11月中旬までに患者数は44,000人にのぼり、このうちの80%以上は広州での発生です(WHO西太平洋 2014-11-18)。
一方、東南アジアではマレーシアで8万人、フィリピンで7万人、シンガポールやベトナムで1万人の患者が発生していますが、今年は昨年に比べて小規模な流行になっています(WHO西太平洋 2014-11-18)。
なお、日本国内では11月上旬までにデング熱患者が322人報告されており、このうち国内例が160人、海外輸入例が161人、不明が1人でした(国立感染症研究所・感染症週報 2014-45週)。輸入例については昨年同時期よりもやや少なくなっています。

ポルトガルでレジオネラ症が集団発生

ポルトガルの首都リスボン近郊にあるビラ・フランカ・デ・シーラで11月からレジオネラ症の流行が発生しています。これまでに患者数は302人にのぼり、このうち5人が死亡しました(WHO GAR 2014-11-13)。
レジオネラ症は肺炎をおこす病気で、シャワー、ジャグジー、エアコンの送風口などを通じてレジオネラ菌を含んだ水微粒子を吸い込むことにより感染します。ヒトからヒトへの感染はありません。今回の流行の原因は調査中ですが、流行地域ではシャワーやジャグジーの使用を控えるようにしましょう。

西アフリカでコレラが流行

西アフリカのナイジェリア、ガーナ、コートジボアールでコレラの流行が拡大しています。1月から9月までの患者数は7万人以上で、これは昨年の2倍以上の数です(WHO アフリカ 2014-10-31)。ガーナでは10月上旬までに首都のアクラなどで2万人以上の患者が確認されました(CDC Traveler’s Health 2012-11-10)。流行地域に滞在する際は飲食物への注意をするとともに、経口ワクチンの接種もご検討ください。

マダガスカルでペストが流行

アフリカ南部のマダガスカルで8月からペストが流行しています。最初の患者は中央の山間部で発生しましたが、流行は周辺地域に波及し、11月までに患者数は119人(40人死亡)にのぼっています(WHO GAR 2014-11-21)。首都アンタナナリボでも2人の患者が確認されており、スラム街などでさらに患者数が増える可能性があります。マダガスカルではペストの流行が毎年発生していますが、今回は今までになく大きな流行のようです。

海外感染症流行情報 2014年10月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

西アフリカでのエボラ熱の流行

西アフリカで発生しているエボラ熱の流行は、10月もさらに拡大しています。WHOが10月22日に発表したギニア、リベリア、シェラエオネの累積患者数は9,911人(死亡4,868人)にのぼっており、この1か月間で患者数が3000人以上増加しました(WHO Global Alert and Response 2014-10-22)。リベリアとシェラレオネでは、ほぼ全土で患者が発生しており、患者数の正確な把握ができない状況に陥っています。また、隣国のマリでも10月下旬に患者発生が確認されています。(WHO GAR 2014-10-24)。一方、WHOはセネガルとナイジェリアでの流行が終息したことを宣言しました(WHO GAR 2014-10-22)。 欧米諸国でもエボラ熱の輸入症例やそれを起点とする二次感染が発生しており、10月下旬までに米国で4人(2人は2次感染)、スペインで1人(2次感染)の患者が確認されました(米国CDC 2014-10-25)。
西アフリカでのエボラ熱流行は今後も続くものと予想されており、ギニア、リベリア、シェラエオの3か国への渡航はできるだけ自粛すべきです。また周辺諸国に滞在する際も、流行状況には十分に注意する必要があります。なお、ワクチン開発も加速されており、英国のグラクソ社と米国のNew Link社のワクチンが近日中に臨床試験に入る模様です(WHO GAR 2014-10-23)。

中東でMERSコロナウイルス感染症の流行が再燃

中東諸国ではMERSコロナウイルス感染症の流行が鎮静化していましたが、9月以降、患者数が再び増加傾向にあります。10月下旬までに全世界での累積患者数は906人(死亡361人)で、このうち772人がサウジアラビアで発生しています(英国National Travel Health Network and Center 2014-10-24)。
また、10月になりオーストリアとトルコで輸入例が確認されました(WHO GAR 2014-10-2, 24)。
MERSはラクダや患者から飛沫感染する病気ですが、毎年、北半球の冬の時期に患者数が増加します。今のところヒトからヒトに効率的に感染する状況ではありませんが、流行地域に滞在する際には飛沫感染への十分な注意が必要です。

アジアでのデング熱流行

日本では東京の代々木公園を中心にデング熱患者が発生していましたが、10月中旬以降は新たな患者発生はみられていません。10月下旬までに累積患者数は159人になりました(厚生労働省 デング熱HP 2014-10-22)。
中国の広東省では7月から20年ぶりとなるデング熱の大流行が発生しています(外務省安全センター情報 2014-10-6)。10月中旬までに患者数は2万5,000人にのぼり、広州市での発生が多くなっています(Pro-MED 2014-10-13)。広東省に滞在する際には蚊に刺されない注意を心がけてください。
東南アジアのデング熱流行は次第に鎮静化しています(WHO西太平洋 2014-9-9)。全体的に今年は昨年に比べて患者数が少なくなっていますが、マレーシア(患者数8万人)では昨年以上、シンガポール(1万6,000人)では昨年並みの数となっています。

南太平洋でのチクングニア熱の流行拡大

南太平洋各地でチクングニア熱の流行が拡大しています。今年の4月にトンガで最初の流行が発生し、それがサモア、タヒチなどに波及した模様です(英国National Travel Health Network and Center 2014-10-17)。サモアでは1,000人以上、タヒチでは200人以上の患者が発生しています。 チクングニア熱は蚊に媒介される感染症で、今年はカリブ海諸国で大流行がみられていますが、今後、南太平洋でも流行拡大することが懸念されています。

ガーナでのコレラの流行

ガーナで今年の7月からコレラの流行が発生しています。患者数は9月上旬までに1万5,000人にのぼっており、首都アクラ周辺での発生が多くなっています(米国CDC 2014-10-3)。現地に滞在中は飲食物に注意してください。

海外感染症流行情報 2014年9月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

西アフリカでのエボラ熱の流行

西アフリカのリベリア、シェラエオネ、ギニアで発生しているエボラ熱の流行は、9月もさらに拡大しています。WHOが9月24日に発表した三カ国の累積患者数は6,242人(死亡2,909人)で、このうち半数近くの患者が最近1カ月以内に発生しています(WHO Global Alert and Response 2014-9-24)。とくにリベリアでは首都モンロビアを含む全土で患者数増加が顕著になっています。近隣のナイジェリア、セネガルでも患者が確認されていますが、いずれもリベリアやギニアからの輸入例を起点とした患者発生で、両国での新たな流行はおきていない模様です。WHOは今回の西アフリカでのエボラ熱の流行が今後半年以上は続くとの見解を示しており、11月初旬までに患者数が2万人を越えるとの推計も発表しています(New England Journal of Medicine 2014-9-24)。
日本の外務省ではリベリア、シェラエオネ、ギニアの3か国について渡航自粛勧告を発しており(外務省海外安全ホームページ 2014-8-8)、日本企業ではこれらの国への従業員の派遣を控えるべきです。また周辺のナイジェリア、セネガルなどでは流行の拡大が今のところ見られていませんが、今後の流行状況には十分に注意する必要があります。

アジアでのデング熱流行情報

日本ではデング熱の患者が8月中旬から東京の代々木公園周辺で発生しており、9月末までの患者数が142人になりました(厚生労働省 デング熱HP 2014-9-24)。流行は鎮静化していますが、媒介蚊の棲息する10月までは注意が必要です。
東南アジアでは雨季の到来とともにデング熱の流行が拡大していましたが、9月になり患者数は次第に減少しています(WHO西太平洋 2014-9-9)。今年はマレーシアで例年より多くの患者が発生しており、9月中旬までに患者数は7万人になりました。これ以外の国では例年並みか、例年より少ない患者数となっています。
インドでも例年9月以降にデング熱の流行が発生しており、ムンバイ近郊のプネでは既に患者数の増加がみられています(Pro-MED 2014-9-5)。

東南アジア諸国での麻疹の流行

今年は東南アジア各地で麻疹の流行が報告されています。フィリピンでは7月末までに4万人以上の患者が発生しており、ベトナムでも8月末までに患者数は1万人以上となりました(米国CDC Traveler’s Health HP 2014-8-27, 9-2)。日本では20歳代後半から30歳代の世代が麻疹に感染しやすくなっており、この世代の人が流行国に滞在する際には麻疹ワクチンの追加接種を受けておくことをお奨めします。

カリブ海諸国でのチクングニア熱の拡大

カリブ海沿岸地域では2013年末からチクングニア熱の大流行が発生していますが、9月中旬までの累積患者数が72万人に達しました(Pan American Health Organization 2014-9-19)。この1カ月で10万人以上の患者が発生したことになります。とくに患者数が多いのはドミニカ共和国で、その数は48万人にのぼっています。また、米国でも輸入症例が1,043人確認されており、フロリダ州では国内感染例が10人発生しました。
なお、今年は南太平洋のサモアでもチクングニア熱の患者が発生しています(英国National Travel Health Network and Center 2014-9-17)。サモアは日本の旅行者にも人気の観光地であり、滞在中は蚊に刺されないように注意する必要があります。

日本での輸入マラリア患者

国立感染症研究所が2006年~2014年6月の日本における輸入マラリア患者(525人)の動向を発表しました(病原微生物検出情報 2014-9月号)。患者数は2000年代初頭まで年間100人以上にのぼっていましたが、最近は年間50~70人で推移しています。死亡例は2008年に発生した1人のみでした。
原虫の種類では熱帯熱マラリアが57.7%を占め、感染地域はアフリカが62.7%でした。患者の性別では男性が76%と圧倒的に多く、年代では男性が30歳代、女性が20歳代にピークがあります。患者の職業としては学生が15.1%と最も多くなっています。最近は学生がボランテイア活動などで熱帯地域に滞在する機会も多く、今後はこうした集団へのマラリア予防対策が必要とされています。

海外感染症流行情報 2014年8月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

西アフリカでのエボラ出血熱の流行

西アフリカで発生しているエボラ出血熱の流行は8月になりさらに拡大し、8月20日までの累積患者数は2615人(死亡755人)になりました(WHO Global Alert and Response 2014-8-22)。約1か月前(7月25日:患者数1201人)に比べて、患者数が倍増したことになります。国別ではリベリアが1082人と最多で、シェラレオネが910人、ギニアが607人と続いています。また、7月末にはナイジェリアのラゴスで、リベリアからの旅行者がエボラ出血熱を発症し、その周辺で16人の患者が確認されました。 こうした事態を受けて、WHOは8月8日に西アフリカでのエボラ出血熱の流行が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」であるとの宣言を行いました(WHO statement 2014-8-8)。さらに日本の外務省も8月8日に感染症危険情報を発出し、リベリア、シェラレオネ、ギニアへの渡航自粛を勧告しました(外務省海外安全ホームページ 2014-8-8)。その一方、WHOは飛行機によりエボラ出血熱が世界に拡散する可能性は低いとのコメントも出しています(WHO statement 2014-8-18)。 エボラ出血熱の感染は患者や遺体との接触で発生します。日本からの渡航者が流行国で感染するリスは低いと考えられますが、リベリア、シェラレオネ、ギニアは社会情勢も悪化しており、これらの国への渡航は延期すべきです。また、周辺諸国に滞在する際には、必要がなければ医療機関に近寄らないよう注意するとともに、日ごろから手洗いを励行することが大切です。

カリブ海諸国でチクングニア熱患者が急増

カリブ海沿岸地域では2013年12月からチクングニア熱の流行が発生ており、8月末までに累積患者数が58万人に達しました(Pan American Health Organization 2014-8-22)。この1カ月で10万人の患者が発生したことになります。とくに患者数が多いのはドミニカ共和国で、その数は37万人にのぼっています。また、米国でも輸入症例が636人確認されており、マイアミ州では国内感染例が4人発生しました。 チクングニア熱は蚊に媒介される感染症で、デング熱と同様に発熱や関節痛をおこす病気です。死亡することは稀ですが、新しい地域で流行が始まると患者数が爆発的に増える可能性があります。東南アジアでもここ数年流行がみられており、今年は南太平洋のサモアやトンガでも患者が発生しています(英国National Travel Health Network and Center 2014-8-19)。日本からの旅行者も流行地域では蚊に刺されないように注意する必要があります。

今年の東南アジアでのデング熱流行情報

東南アジアの多くの地域が雨季に入り、デング熱の流行シーズンを迎えています。マレーシアでは今年の患者数が53000人と昨年より増えていますが、それ以外の国では、今のところ患者数が昨年よりも少ない状況です(WHO西太平洋 2014-8-12)。東南アジアではこれから暫く雨季が続くため、引き続きデング熱にはご注意ください。

オーストラリアでのインフルエンザ流行

南半球は冬のシーズンを迎え、インフルエンザの本格的な流行が発生しています(WHO Influenza update 2014-8-25)。今年はオーストラリアでの患者数が多く、昨年の2倍にあたる2万人の患者が確認されました(Fit For Travel 2014-8-13)。流行のピークは既に越えたようですが、現地に滞在する際には手洗いやウガイなどの予防対策をとるようにしましょう。なお、オーストラリアではH1N1型のウイルスが多く分離されています。

米国カリフォルニア州で百日咳流行

今年の4月頃から米国のカリフォルニア州で百日咳の流行が発生しています(米国CDC 2014-8-18)。8月中旬までの報告では患者数が7500人以上に達しており、2010年の流行で発生した年間患者数(9159人)を越える可能性があります。地域としてはサンディエゴやサンフランシスコなどで多く、患者の年齢はほとんどが18歳未満(平均15歳)の小児や学生です。学校での集団発生もみられています。日本からカリフォルニア州の学校に留学する際には、出国前に百日咳ワクチン(DTPワクチンなど)の追加接種を受けることも検討してください。

海外感染症流行情報 2014年7月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

西アフリカでエボラ出血熱の流行が拡大

2013年12月から西アフリカで発生しているエボラ出血熱の流行は7月も続いており、患者数のさらなる増加がみられています。7月23日までの累積患者数(疑いを含む)は1201人で、このうち672人が死亡しました(WHO Reginonal Office for Africa 2014-7-25)。7月だけで患者数が442人増加したことになります。また、7月以降の患者数を国別にみると、シェラレオネ286人、リベリア142人、ギニア14人で、今まで患者発生の多かったギニアから、シェラレオネやリベリアに流行が拡大している模様です。さらに、近隣国であるナイジェリアでも、7月末にエボラ出血熱を疑う患者が1名発生しました(WHO Regional Office for Africa 2014-7-25)。この患者はリベリアからの旅行者です。 現在、WHOや発生国による懸命の制圧作戦が展開されています。

米国本土でチクングニア熱の国内感染例が発生

カリブ海諸国で昨年末からチクングニア熱の流行が急速に拡大しています。累積患者数は7月中旬までに43万人となり、ドミニカ(25万人)やハイチ(6万人)で患者数が多くなっています(Pan American Health Organization 2014-7-18)。カリブ海諸国から米国への輸入症例も増加しており、7月22日までにその数は300人近くになりました(CDC Chikungunya virus HP 2014-7-22)。こうした輸入症例の増加にともない、米国本土のフロリダ州でチクングニア熱の国内感染例が2人発生しました(CDC Press release 2014-7-17)。現在、米国は夏のシーズンを迎えており、この病気を媒介するヒトスジシマカの増加が予想されます。このため、チクングニア熱の国内感染例がさらに増える可能性があります。 フランスでもチクングニア熱の輸入症例が増加しており、2013年11月~6月の患者数は475人になりました(Eurosurveillance 2014-7-17)。一方、日本での今年の輸入症例は6人(2014年7月16日まで)と少数に留まっています。

中東のMERS流行は鎮静化

7月になり中東でのMERSの流行は鎮静化傾向にあります。7月1日から26日までにWHOが報告した患者数は、サウジアラビア13人、UAE2人、イラン2人でした(WHO Global Alert and Response 2014-7-2, 4, 14, 23)。イランで発生した2人の患者はいずれも海外渡航歴がなく、国内で感染したものと推測されています。 なお、7月26日からMERSは日本国内で指定感染症ならびに検疫感染症として対応されることになりました。今後、MERSを疑う患者については入院措置や検疫措置やが可能になります。 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/mers.html

東南アジアのデング熱流行状況

東南アジア各地は雨期を迎え、デング熱の流行時期になっています。今年はフィリピン、カンボジア、ラオス、ベトナムなどで、昨年よりも患者数が少なくなっています(WHO Western Pacific Region 2014-7-15)。その一方、マレーシアやシンガポールでは昨年を上回る患者数が報告されています。 東南アジアではこの先も雨期が続くため、現地に滞在する方はデング熱を媒介する蚊に刺されないようにご注意ください。なお、日本での今年の輸入症例は7月16日までに86人となり、昨年と大きな変化はありません。

世界各地の麻疹流行状況

今年は世界各地で麻疹の流行が報告されています。中国では今年上半期に3万2000人(厚生労働省検疫所HP 2014-7-3)、フィリピンではマニラなどで4万人以上の患者(疑いを含む)が発生しました(CDC Traveler’s Health HP 2014-7-7)。ニュージーランドでも北部のワイカトなどで麻疹の患者数が増加しています(Fit For Travel 2014-5-26, 6-2)。さらに、ヨーロッパでも麻疹患者の発生が各地でみられており、昨年5月から1年間に、オランダで2700人、イタリアで2300人の患者が確認されました(Europe CDC 2014-6-16)。 麻疹は空気感染をおこす病気で、海外渡航者が流行国滞在中に感染するケースも少なくありません。とくに日本では20歳代後半~30歳代にかけて麻疹の免疫が低いとされており、この世代は海外渡航前に麻疹ワクチンの追加接種をご検討ください。

海外感染症流行情報 2014年6月(東京医科大学病院 渡航者医療センター)

アジアでの麻疹流行状況

アジア各地で麻疹の流行が報告されています。中国では4月だけで9000人以上の患者が発生しました(厚生労働省検疫所 2014-6-3)。フィリピンでは5月中旬までにマニラなどで4万人の患者、ベトナムでも北部を中心に4月中旬までに8000人以上の患者が発生した模様です(CDC Traveler’s Health HP 2014-6-2,4)。またインドやパキスタンなど南アジアでも患者数の増加が報告されています(Fit For Travel 2014-5-26, 6-2)。
日本でも今年は麻疹患者の増加がみられていましたが、6月になり発生数はやや少なくなっています。6月中旬までの患者数は375人で、このうち83人は海外での感染例でした(国立感染症研究所・感染症疫学センター 2014-6-24) 。麻疹の流行国に滞在する際には麻疹ワクチンの接種について検討してください。

中東でのMERS流行状況

サウジアラビアでは本年4月~5月にMERSの患者数が急増しましたが、6月になり患者発生は沈静化しています。WHOは4月~6月上旬にサウジアラビアで確認された402人の患者についての解析結果を報告しています(WHO Global Alert and Response 2014-6-13)。この報告によれば、患者発生はジッダ(154人)で最も多く、25%以上が病院関係者でした。このうち114人が死亡していますが、無症状か軽症の患者も114人いました。6月はサウジアラビア以外に、UAE、ヨルダン、イラン、アルジェリアでMERSの患者が確認されています(WHO GAR 2014-6-4,11,14)。
なお、WHOはMERSウイルスの感染源としてラクダの可能性が高いとの見解を示しています(WHO GAR 2014-6-13)。流行地域に滞在する際はラクダに接しないよう注意するとともに、日ごろから手洗いを励行するようにしましょう。

カリブ海でチクングニア熱の流行が拡大

2013年12月にカリブ海諸国で発生したチクングニア熱の流行は急速に拡大しており、エルサルバドルやコスタリカなど中米諸国にも波及しています。カリブ海・中米地域での累積患者数は6月20日までに18万人にのぼっており、ドミニカ共和国では8000人以上、ハイチでも1000人以上の患者が発生しています(Pan American Health Organization 2014-6-20)。米国でも輸入例が確認されており、今後、米国内に流行が波及することも懸念されています。
チクングニア熱は蚊が媒介する感染症で、今までにアフリカやアジア諸国で流行がみられていました。
本症は発熱とともに関節痛がおこることが特徴で、死に至るケースは稀です。ワクチンがないため、流行地域では蚊に刺されない対策をとることが唯一の予防方法になります。

西アフリカでエボラ出血熱の流行が続く

昨年12月から西アフリカでみられているエボラ出血熱の患者発生は6月になっても続いています。流行の中心であるギニアでは6月下旬までに390人の患者(死亡267人)が確認されており、この1か月間で約140人の患者が発生したことになります(WHO GAR 2014-6-22)。隣国のシエラレオネでも136人(58人死亡)、リベリアでも41人(25人死亡)の患者が発生ており、WHOなどによる国際的な制圧対策が展開されています。

パキスタン出国時のポリオワクチン接種証明書の提示

WHOは本年5月5日にポリオの流行拡大阻止に関する声明を発表しました(WHO News 2014-5-5)。これは近年、世界的にポリオの流行が再燃しているため、ポリオの輸出国(パキスタン、シリア、カメルーン)では出国者にワクチン接種を行い、拡大を阻止することが必要とする内容です。この声明を受けて、パキスタン政府は同国からの出国者にポリオワクチン接種証明書の提示を要求しています。対象となるのはパキスタンに4週間以上滞在した者で、出国の4週間前から1年以内にポリオワクチン(不活化か生ワクチン)の接種を少なくとも1回は受けていることが必要です。この接種記録はWHOの指定する証明書に記載することが求められています。この証明書は1年間有効で、期限を過ぎた場合は再接種する必要があります。パキスタンに1か月以上滞在する方は出国前にワクチン接種を受け、この証明書を準備しておくことをお勧めします。
#1:WHOの証明書の書式は下記文書のAnnex 6を参照
http://whqlibdoc.who.int/publications/2008/9789241580410_eng.pdf
#2:パキスタン政府の対応は下記の在パキスタン日本大使館の情報を参照
http://pkembjapan.blogspot.jp/2014/06/blog-post_6976.html