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海外感染症流行情報 2020年4月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

・全世界:新型コロナウイルスの流行状況

新型コロナウイルスの流行は4月25日までに世界185の国と地域に波及しており、感染者数は280万人以上、死亡者数は20万人以上にのぼっています(米国ジョンホプキンス大学 2020-4-26)。米国での流行はピークに達していますが、一日の感染者数は2~3万人で、2000人前後の死亡者が発生しています。イタリアやスペインでは感染者数の増加が抑えられてきており、一日の発生数は5000人前後になっています。アジアでは中国の流行がほぼ収束していますが、シンガポールで4月中旬から感染者数が一日に1000人前後と増加しています。また、インド、トルコ、ロシア、ブラジルなどの新興国で4月に入り感染者数が増加しています。今後、流行はアフリカや中南米にも拡大すると予想されます。なお、日本では4月25日までに約1万2000人の感染者が発生し334人が死亡しました。 日本の外務省は海外感染症危険情報を4月24日に発出し、ロシアやUAEなど14か国をレベル3(渡航中止勧告)に引き上げました(外務省安全センターホームページ 2020-4-24)。この結果、渡航中止勧告が発出されている国はアジア、中東、ヨーロッパ、北米、中南米などの87か国にのぼっています。

・全世界:新型コロナ流行で他の感染症も増加

新型コロナウイルスの流行にともなう各国の保健体制の破綻により、他の感染症の増加もおきています。メキシコでは今年4月までに1300人以上の麻疹患者(疑いを含む)が発生しており、新型コロナ流行で麻疹ワクチン接種が滞っていることが原因とみられています(WHO Outbreak news 2020-4-24)。フィリピンでも新型コロナの対応により、今年は200万人の小児が麻疹ワクチンの接種が受けられないと予測されています(UNICEF Press release 2020-4-23)。新型コロナの流行がアフリカで拡大すると、マラリア対策にも大きな影響が生じる可能性があります(WHO statement 2020-4-23)。WHOは今年のマラリアの死亡者数が77万人にのぼると予想しており、これは2018年の2倍の数になります。このように、新型コロナウイルスの流行は他の感染症の流行にも影響を及ぼす可能性があります。

・アジア:シンガポールのデング熱流行状況

今年はシンガポールでデング熱患者数が増加しており、4月中旬までに5400人以上に達しています(WHO西太平洋 2020-4-23)。これは昨年の倍近い数になります。5月から9月までは例年、患者数の増える期間になるため、さらなる警戒が必要です。なお、隣国のマレーシアでも今年は4万人弱の患者が発生しています。

・アフリカ:コンゴでエボラ熱流行が再燃

コンゴ民主共和国で4月10日から21日までに北東部のBeniで6人の患者が確認されました(WHO Outbreak news 2020-4-23)。この地域は以前から流行の中心地域でしたが、2月中旬以降、新たな患者は発生していませんでした。こうした状況を受けて、WHOは同国に発令している「公衆衛生上の緊急事態宣言」の続行を決定しました(WHO statement 2020-4-14)。2018年からの流行による累積患者数は3461人(疑い含む)で、このうち2279人が死亡しています。

・アフリカ:エチオピアで黄熱患者が発生

エチオピアの首都アジスアベバ南方のグラゲ地方で黄熱の患者が発生しています(WHO Outbreak news 2020-4-18)。3月上旬から1か月間に85人の患者が確認されました。エチオピアに滞在する際には黄熱ワクチンの接種を受けておくことを推奨します。