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海外感染症流行情報 2015年10月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

MERS流行状況

サウジアラビアでは最近1か月間にリヤドなどで24人のMERS患者が確認されています(WHO GAR 2015-9/27, 30, 10/12, 22)。患者数は先月より減少しており、9月末のイスラム教大巡礼による影響もなかったようです。一方、ヨルダンでは首都アンマンで8月末から10月中旬にかけて16人のMERS患者が発生しました(Europe-CDC 2015-10/21)。病院内での感染が中心ですが、ヨーロッパCDCは、この流行について今後の推移をみる必要があるとコメントしています。
なお、韓国では、今年の6月にMERSを発症し治癒した患者(35歳男性)が、10月末に再発をおこしたことが明らかになりました(WHO GAR 2015-10/25)。

季節性インフルエンザの流行状況

南半球の温帯地域では冬の季節性インフルエンザの流行がほぼ終了しました(WHO-Influenza 2015-9/7)。チリでは9月にA型の患者数が増えていましたが、10月になり鎮静化しています。ニュージーランドではB型の流行が小規模ながら続いています。北半球ではインドでA型(H1N1)の患者数が増加していますが、温帯地域での流行は今のところみられていません。

アジアのデング熱流行状況

今年は台湾でデング熱の患者が例年になく増加しており、10月末までにその数は27,000人に達しています(台湾CDC 2015-10-26)。重症者も多く、122人の死亡が確認されました。患者発生が多いのは台南(21,000人)と高雄(5,000人)など南部地域です。11月になると気温の低下とともに蚊の活動が低下し、流行は終息するものと予想されています。
東南アジアではデング熱の患者数が昨年並みか、やや多くなっています。10月までにマレーシアでは9万人、フィリピンで10万人、ベトナムで4万人、タイで8万人の患者が確認されました(WHO西太平洋 2015-10-20, ProMED 2015-10/14)。

中国で鳥インフルエンザ(H7N9型)の流行が再燃

中国の浙江省で10月に鳥インフルエンザ(H7N9型)の患者が2人発生しました(WHO GAR 2015-10/19)。中国では沿岸部を中心に毎年冬季に鳥インフルエンザの流行がみられていますが、2013年以来の累積患者数は679人(死亡275人)になりました。中国に滞在中は生きた家禽のいる市場などに立ち入らないようにしましょう。

中国での麻疹流行

WHO西太平洋事務局の発表によれば、今年は中国で麻疹患者が増加しています。2015年の患者数は9月末までに37,000人にのぼっており、過去2年の年間患者数(2013年:26,000人、2014年:48,000人)を越える可能性があります。麻疹は空気感染する疾患であり、過去のワクチン接種が不十分な世代(20歳代後半~30歳代など)が中国に滞在する際には、出国前にワクチンの追加接種をうけておくことをお勧めします。

ベネズエラでマラリア患者が増加

南米のベネズエラでマラリアの患者が増えています。南部のBolivar州では9月末までに患者数が8万人以上に達しました(ProMED 2015-10/9)。流行しているマラリアの種類は良性の三日熱マラリアが大多数ですが、悪性の熱帯熱マラリアも一部みられています。
Bolivar州にはギアナ高地があり、日本からの観光客も数多く滞在します。一般にギアナ高地ではマラリアの感染リスクが低いとされていますが、これから先、同地に滞在する際はマラリアの予防対策(夜間、蚊に刺されない対策)を実施するようにしましょう。