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海外感染症流行情報 2015年9月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

アジアのデング熱流行状況

台湾では南部を中心にデング熱患者が増加しており、9月中旬までに1万3000人の患者が確認されました(台湾CDC 2015-第36週)。昨年に比べて3倍近い数になっています。患者発生は台南で最も多く、高雄でも患者数が増えている模様です。
マレーシアでは9月中旬までに8万5000人、ベトナムでも3万6000人の患者が発生しており、これは昨年同期よりも多い患者数です(WHO西太平洋 2015-9/22)。フィリピンでは昨年並みの6万5000人が発生していますが、日本国内への輸入例が8月に急増しました。タイでは9月中旬までに4万6000人の患者(死亡例5人)が確認されており、中部や北部での患者発生が多くなっています(タイ保健省 2015-9/22)。
インドでも9月になり南部を中心に患者数の増加が報告されています(外務省 海外安全HP  2015-9/24)。

マレーシア北部での狂犬病流行

マレーシアは狂犬病の流行レベルが低い国とされていましたが、最近になりタイ国境付近のPerlis州やKedah州で狂犬病にかかった犬が続けて発見されています(ProMED 2015-8/29, 9/20)。Kedah州の事例は飼い犬でした。マレーシアのタイ国境付近(北部)に滞在する際には、事前に狂犬病ワクチンの接種を受けておくことをお勧めします。

中東でMERS患者の発生が続く

サウジアラビアでは9月も首都のリヤドなどでMERS患者が発生しています。最近1カ月間で患者数は126人にのぼっていますが、次第に減少傾向にあります(WHO GAR 2015-8/26,27, 9/2,8,9,17)。WHOは9月3日に緊急委員会を開催し、サウジアラビアの流行は公衆衛生上の緊急事態にあたらないとの声明を発表しました(WHO Media Center 2015-9/3)。なお、ヨルダンでも9月は首都アンマンなどで11人の患者が確認されています(WHO GAR 2015-9/1,6,18)。サウジアラビアでは9月20~25日に大巡礼(ハッジ)が行われており、世界中から多くの外国人がこの国を訪問しています。このため、今後暫くは世界的流行への十分な警戒が必要です。

西アフリカのエボラ熱流行は鎮静化

昨年のこの時期は西アフリカでエボラ熱の大規模な流行がみられていましたが、今年はほとんどの国で流行が鎮静化しています。リベリアでは7月中旬以降に新たな患者が確認されておらず、WHOは9月3日に終息を宣言しました(WHO Media Center 2015-9/3)。ギニアでは9月になり3人、シェラレオネでは6人が確認されており、一時よりも発生数はかなり少なくなっています(WHO GAR 2015-9/23)。ただし、WHOはギニア、シェラレオネでの流行は未だに続いているとの見解を示しており、日本の外務省も両国への不要不急の渡航を控えるように勧告しています(外務省 海外安全センターHP 2015-9/11)。

東アフリカでのコレラ流行

アフリカ東部のタンザニアで、首都のダルエスサラームなどを中心にコレラの患者数が増加しています。流行が発生したのは8月中旬で、9月初旬までに患者数は900人以上に達した模様です(WHO GAR 2015-9/11)。タンザニアにはキリマンジャロ観光やサファリツアーなどで訪問する日本人も多く、滞在中は飲食物への十分な注意が必要です。また、コレラは経口ワクチンで予防できますが、衛生環境の悪い場所に滞在する渡航者にはこのワクチンの接種をお勧めします。日本では未承認のため、輸入ワクチンを扱っているトラベルクリニックで受けてください。

南半球での季節性インフルエンザ流行

南半球の温帯地域では冬の季節が終わりを迎えており、インフルエンザの流行が鎮静化しています(WHO-Influenza 2015-9/7)。ただし、オーストラリアとニュージーランドではA香港型(H3N2)とB型の流行が9月も続いている模様です。これらの地域では引き続き予防対策を心がけてください。