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海外感染症流行情報 2020年2月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

・全世界:新型コロナウイルスの流行

2019年12月に中国・武漢で発生した新型コロナウイルスの流行は、2月になり中国全土に及ぶとともに、日本、韓国、イラン、イタリアなどの国々にも波及しています。2月24日時点の全世界の患者数は7万8000人以上で、約2400人が死亡しました(WHO Coronavirus disease 2020-2-23)。中国の湖北省では全患者数の8割、死亡者数の95%が発生し、依然として流行が続いていますが、中国のそれ以外の地域では患者発生数が減少傾向にあります。一方、日本では患者数が全国で130人以上(クルーズ船の感染者を除く)、韓国では大邱などで600人以上に増加しています。また、イタリアでは北部を中心に、イランでは首都テヘランの近郊で患者数の増加がみられており、今後、周辺諸国に流行が波及することも懸念されています。この先、流行が世界的に拡大するかどうかは、今後1~2週間の経過をみる必要があります。

・全世界:北半球でのインフルエンザの流行

北半球ではインフルエンザの流行がピークに達しています(WHO Influenza 2020-2-17)。今シーズン、北米ではB型の流行が例年以上にみられていましたが、2月に入りA(H1N1)型が主に検出されています。米国の入院患者数や死亡者数は例年と比べて大きな変化がみられていません(米国CDC FluView 2020-2-21)。ヨーロッパではA型のH1N1とH3N2がほぼ同じ割合で検出されています(ヨーロッパCDC 2020-2-17)。

・アジア:フィリピンでポリオ患者発生

フィリピンでは昨年からワクチン株由来のポリオウイルスの流行が発生しています。昨年9月以降は新しい患者発生がありませんでしたが、今年2月にルソン島中部で17人目の患者が確認されました。フィリピンに長期滞在する際はポリオワクチンの追加接種を受けておくことを推奨します。

・アジア:東南アジアでデング熱患者が増加傾向

東南アジアの赤道周辺地域でデング熱患者数が増加しています。マレーシアでは1月から1万8000人、シンガポールでは約2000人の患者が確認されました(WHO西太平洋 2020-2-13)。マレーシアは昨年同期とほぼ同数ですが、シンガポールでは昨年よりも多い数になっています。日本が冬の時期でも、東南アジアに滞在中は蚊の対策を心がけてください。

・アフリカ:ナイジェリアでラッサ熱患者が増加

今年は西アフリカのナイジェリアで2月上旬までに472人のラッサ熱患者が発生しました(WHO Outbreak news 2020-2-20)。このうち70人が死亡しています。ラッサ熱はウイルス性出血熱で、このウイルスに感染したげっ歯類に接触するなどして感染します。西アフリカでは1月~4月の乾期にラッサ熱患者が毎年増加しますが、今年は患者数がとくに多くなっています。西アフリカのシエラレオネやリベリアでも患者数が増加している模様です(英国Fit For Travel 2020-1-31、Outbreak News Today 2020-2-4)。