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海外感染症流行情報 2020年3月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

・全世界:新型コロナウイルスの流行状況

WHOは3月11日に新型コロナウイルスの流行がパンデミック(世界的な流行)の状態にあると発表しました(WHO COVID19 News 2020-3-11)。3月24日時点で流行は世界190か国以上に及んでおり、感染者数は38万人、死亡者数は1万6000人以上にのぼっています。今回の流行が最初に発生した中国では、新しい感染者の発生がほぼ収束していますが、3月以降、イタリアからヨーロッパ各地に流行が波及しており、イタリアでは3月下旬までに6万人以上の患者が発生し、6000人の死亡が確認されました。また、米国でも感染者数が急増ししており4万人以上にのぼっています。東南アジア、インド、中東、ブラジルなどでも感染者数が増加傾向にあります。
こうした感染者数の増加にともない、日本の外務省はヨーロッパ諸国、イラン、中国と韓国の一部地域への渡航禁止を勧告しています。https://www.anzen.mofa.go.jp/ 
また、日本政府は中国、韓国、ヨーロッパ諸国、イラン、エジプト、米国からの入国者について、自宅などでの2週間の待機と健康観察を求めています。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00098.html

・アジア:東南アジアでのデング熱の流行状況

東南アジアの国々ではデング熱の患者数が増加傾向にあります。3月上旬までにマレーシアやフィリピンではそれぞれ2万人を越える患者が確認されました(WHO西太平洋 2020-3-12)。シンガポールでも3200人の患者が発生しており、昨年よりやや多い数になっています。なお、当センターの濱田教授らはデング熱など蚊媒介感染症の予防対策を紹介した動画を作成しました。下記のホームページに掲載されていますので、ご活用ください。http://www.tra-dis.org/movie/index.html

・アフリカ:コンゴでのエボラ熱流行は収束傾向

コンゴ民主共和国で発生しているエボラ熱の流行は収束傾向にあります。2020年2月17日以降、新たな患者は報告されていません(WHO Outbreak news 2020-3-19)。2018年からの流行による累積患者数は3440人(疑い含む)で、このうち2264人が死亡しました。

・武田薬品のデング熱ワクチンが第3相試験を終了

武田薬品が開発していたデング熱ワクチンTAK-003の第3相臨床試験結果が発表されました(Lancet 2020-3-17)。このワクチンは遺伝子組換えの生ワクチンで、3か月間隔で2回接種します。アジアや中南米で2万人の小児を対象に行った試験結果では、接種後17か月のワクチン接種による感染防御効果が73.3%で、重症化は85.9%抑制しました。重篤な副反応は今のところみられていません。

(コメント)新型コロナウイルス・パンデミック時の海外渡航者対策

WHOが新型コロナウイルスのパンデミック宣言を発表したのにともない、海外進出企業や旅行業では海外渡航者への長期的対策が求められています。海外旅行や出張になど短期の渡航に関しては出来るだけ自粛することが推奨されます。外務省の渡航禁止勧告がでている国や入国制限を行っている国はもちろんのこと、それ以外の国についても流行状況に応じて渡航を自粛してください。
駐在員など長期滞在者については、流行拡大にともない感染の危険性が増すだけでなく、社会情勢が不安定になる可能性があります。また、感染を疑う症状がみられた場合、かかりつけ医ではなく、指定医療機関に受診する必要性も生じます。このため、流行状況に応じて日本への一時退避を検討してください。とくに高齢者や慢性疾患のある人は重症化の頻度が高くなるため、早めの退避を推奨します なお、感染リスクの高い国からの帰国者については、2週間は自宅などに待機し、健康状態の観察(検温など)を行ってください。パンデミック時には海外進出企業や旅行業の活動に大きな影響を与えますが、流行が早期に収束すれば経営面での被害を抑えることができます。日本を含む各国の実施している対策にご協力をお願いいたします。(東京医科大学病院 渡航者医療センター 濱田篤郎)