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海外感染症流行情報 2017年12月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

・日本で外国人の結核患者が増加

国立感染症研究所の発表によれば、2016年は日本で1万7000人の結核患者が新規に報告されました(病原微生物検出情報 2017年12月号)。このうちの8%は外国生まれの患者で、2006年の4%に比べて約2倍になっています。とくに20歳代の患者の6割近くは外国人です。国別ではフィリピン、中国からの外国人が多くなっていますが、最近はベトナム、ネパールからの外国人患者の増加が顕著です。

・アジアでのデング熱の流行状況

12月は東南アジアでのデング熱の流行が鎮静化しています(WHO西太平洋 2017-12-5)。1月に入ると、インドネシア、マレーシア、シンガポールは雨が多くなり、蚊が増えるため、注意が必要です。 今年は南アジアでデング熱の流行が拡大し、スリランカで17万人、パキスタンで12万人の患者数になりました(英国FitForTravel 2017-12-4, WHO 2017-12-13)。インドでも南部で患者数が昨年より大幅に増加しました(ProMED 2017-12-2)。

・アジアでのジフテリア流行

バングラディッシュにある「ミャンマーからのロヒンギャ難民キャンプ」でジフテリアの患者が多発しています(WHO 2017-12-13)。昨年11月からの1年間で、小児を中心に800人以上の患者が確認されました。中東のイエメンでも今年8月から11月までに100人以上のジフテリア患者が発生しています(WHO東地中海 2017-11-19)。同国では内戦が勃発しており、コレラ患者も100万人に達しています(WHO東地中海 2017-12-19)。 ジフテリアは患者から飛沫感染する病気で、上気道炎をおこすとともに、心臓や神経系の重篤な障害を併発します。ワクチン接種で予防できる病気ですが、内戦などでワクチン接種が受けられない状況になると流行が発生します。なお、今年はインドネシアでもジフテリアの患者が600人近く発生しており、昨年(約400人)よりも増加傾向にあります(ProMED 2017-12-9)。

・マダガスカル都市部でのペスト流行は終息

11月末にマダガスカル保健省は、首都アンタナナリボなど都市部で発生していたペストの流行が終息したことを発表しました(WHO 2017-11-27)。マダガスカルでは今年8月からペストの流行が始まり、2500人以上の患者が確認されています(WHO 2017-12-15)。ヒトから飛沫感染する肺ペストが7割以上を占め、アンタナナリボでも患者の発生がみられていました。12月になり都市部での流行は終息しましたが、山岳地帯などでは患者発生がみられており、引き続き警戒が必要です。

・北米で季節性インフルエンザの流行が始まる

カナダでは12月に入ってから季節性インフルエンザの流行が始まり、患者数が増加しています(WHO 2017-12-11)。ウイスルの種類としてはA(H3N2)型が多く検出されており、例年よりも早い時期からの流行になっています。米国でも12月中旬に季節性インフルエンザの流行期に入ったことが発表されました(CDC Flu View 2017-12-16)。

・ブラジルで黄熱流行のリスク続く

ブラジルのサンパウロ州で7月以降、黄熱患者が2人発生し、動物の集団感染例も120件確認されています(米州保健機関 2017-12-13)。動物の集団感染はカンピーナス周辺で多くみられていますが、10月中旬にはサンパウロ市内の公園でも確認されました(WHO 2017-11-24)。ブラジルの都市部で動物の集団感染が確認されたのは1942年以来です。ブラジルでは今年になり南部のミナス・ジェライス州を中心に黄熱の流行が発生し、6月までに779人の患者が発生していました。今後もブラジルに滞在する際には、黄熱のワクチン接種を推奨します。