海外感染症流行情報 2025年10月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)
(1)全世界:チクングニア熱の流行状況
2025年は蚊に媒介されるチクングニア熱が世界的に流行しており、9月末までの全世界の患者数は26万人で、昨年に比べて大幅に増加しました(WHO 25-10-3)。とくに米州ではブラジルを中心に22万人が発生しており、アジアでもインドやインドネシアで報告数が多くなっています。また、今年は温帯地域での流行も発生しており、中国の広東省では9月下旬までに16,000人(英国National Travel Health Network Center 25-10-16)、ヨーロッパでもフランスで700人、イタリアで300人の国内感染例が報告されました(ヨーロッパCDC 25-10-24)。日本でも今年の輸入例は9月末までに19人で、昨年の年間輸入例(10人)をすでに超えています。
(2)全世界:COVID-19の流行状況
世界各国のCOVID-19の流行は10月になり収束しています(WHO COVID-19 dashboard 25-10-5)。ウイルスの種類は、世界的にXFG型が7割以上を占めており、日本などアジア地域でも増加傾向にあります。
(3)アジア:インフルエンザの流行
東南アジアでインフルエンザの流行が発生しており、インドネシア、シンガポール、タイ、ミャンマーなどで患者数の増加がみられています(WHO global influenza program 25-10-22)。ウイルスの種類はH3型が多く検出されています。日本でも10月になりインフルエンザの流行期に入っていますが、患者数の大きな増加は報告されていません(厚生労働省 25-10-24)。
(4)アジア:デング熱の流行状況
東南アジアや南アジアの国々ではデング熱の流行期を迎えていますが、25年の患者数は昨年と比べて同等かやや少ない状況です(WHO西太平洋 25-10-2、WHO南東アジア 25-10-20)。日本国内の輸入例も10月中旬までに135人で、昨年同期(193人)に比べて少なくなっています(国立健康危機管理研究機構 25-10-20)。今年の輸入例の感染国はインドネシアが最多で、インド、フィリピンが続いています。
(5)アフリカ:セネガルでリフトバレー熱が流行
西アフリカのセネガルでリフトバレー熱の流行が発生しています(英国National Travel Health Network Center 25-10-20)。流行が起きているのは北部のサンルイス地域で、245人の患者が報告され、うち21人が死亡しました。リフトバレー熱は出血熱を起こすウイルス疾患で、蚊に媒介されます。ウシやヤギなどの家畜がかかることが多く、ヒトも病原体を保有する蚊に刺されると感染します。
(6)ヨーロッパ:エムポックスⅠb型の国内感染例が発生
スペイン、イタリア、オランダなどでエムポックス1b型の国内感染例が6人報告されました(ヨーロッパCDC 25-10-24)。いずれも男性で、ヨーロッパにおける男性間の性行為で感染が拡大している可能性があります。なお、米国でもカリフォルニア州で、10月に3人の1b型の国内感染例が報告されました(カリフォルニア州公衆衛生局 25-10-17)。
