海外感染症流行情報 2025年4月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

(1)アジア:デング熱の流行状況

WHO西太平洋事務局および南東アジア事務局の報告では、今年のアジアのデング熱患者数は今のところ例年並みになっています(WHO西太平洋 25-4-3、WHO南東アジア 25-4-9)。一方、米国CDCによれば、フィリピン、フィジー、タヒチ、トンガなど南太平洋の国々で、今年になりデング熱の患者数が増加しています(米国CDC Traveler‘s Health 25-4-15)。南太平洋は日本からの観光客も多い地域であり、滞在中は蚊に刺されないよう注意してください。

(2)アフリカ:エチオピアでのマラリアとコレラの流行

東アフリカのエチオピアでマラリア患者が増加しています。今年は2月末までに患者数が90万人にのぼっており、西部のGambella地域で多く発生しています(英国Fit For Travel 25-3-31)。この地域ではコレラも流行しており、3月末までに2500人以上の患者が確認されました(英国National Travel Health Network and Center 25-4-15)。

(3)北米:米国での鳥インフルエンザH5N1型の流行状況

米国で昨年から発生している鳥インフルエンザH5N1型ウイルスの患者は、この1ヶ月間増加しておらず、70人のままです(米国CDC 25-4-22)。一方、ウシの感染は、この1ヶ月間でアイダホ州など西部を中心に35例が確認されました(US Department of agriculture 25-4-22)。また、隣国のメキシコでは、4月初旬に北西部のDurango州で、3歳女児がH5N1型ウイルスに感染し死亡しました(WHO-4-17)。この女児から検出されたウイルスは米国で流行している種類(clade 2.3.4.4b)と同じですが、より病原性の高い型です。感染経路は今のところ明らかになっていません。

(4)北米:米国、カナダで麻疹患者が増加

米国では今年になりテキサス州を中心に麻疹患者が増加しており、4月中旬までに患者数は800人以上で、このうち3人が死亡しました(米国CDC 25-4-18)。昨年の年間患者数は既に越えており、2019年に記録した2000年以降の最多数(年間1274人)も越える可能性があります。患者の7割は20歳未満の世代で、ワクチン接種を受けていない者がほとんどです。カナダでもオンタリオ州を中心に麻疹患者が多発しており、今年に入ってからの累積患者数は700人以上になりました(ヨーロッパCDC 25-4-16)。

(5)南米:南米での黄熱流行地域の拡大

今年は南米で黄熱の患者数が増加しており、コロンビア、ペルー、ボリビアでは、患者が新たな地域で発生しています(米国CDC Traveler‘s Health 25-4-15)。このため、米国CDCは黄熱ワクチンの接種推奨地域を拡大しました。コロンビアではアンデス山中のトリマで患者が増加しており、4月中旬までに累積患者数は57人(23人死亡)になっています(英国National Travel Health Network and Center 25-4-17)。