海外感染症流行情報 2025年8月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

(1)全世界:COVID-19の流行状況

欧米諸国や日本では、COVID-19の夏の流行期に入っています(米国CDC 25-8-16、ヨーロッパCDC 25-8-22、厚生労働省 25-8-22)。ウイルスの種類は、日本ではNB.1.8.1型、欧米ではXFG型が多く、いずれも感染力はやや強いものの、重症度には変化がみられません(WHO COVID-19 dashboard 25-8-5)。

(2)アジア:中国・広東省でのチクングニア熱流行

今年7月から中国・広東省の仏山市を中心に、チクングニア熱の流行が発生しており、8月中旬までに患者数は9,000人を越えました(ヨーロッパCDC 25-8-22)。米国CDCは流行地域に滞在する際にチクングニア熱ワクチンの接種を推奨していますが(米国CDC Traveler‘s Health 25-8-11)、このワクチンは日本では承認されていません。このため、日本から渡航する際は媒介蚊に刺されない対策をとり、予防するようにしてください。

(3)アジア:アジアや西太平洋でデング熱流行が拡大

東南アジアや南アジアでは多くの国が雨季を迎えており、デング熱の流行が拡大しています(WHO西太平洋 25-8-21、WHO南東アジア 25-8-13)。患者数は昨年と比べて同等か少ない状況です。一方、今年は西太平洋のフィジーやサモアなどで患者数が例年より増加しており、滞在する際は注意が必要です(米国CDC Traveler‘s Health 25-8-21)。

(4)アジア:南アジアでインフルエンザ患者数が増加

インド、バングラディッシュ、タイでは今年7月以降、インフルエンザの患者数が増加しており、A香港型(H3)が主に検出されています(WHO南東アジア 25-8-13)。アジアの熱帯地域では雨季にインフルエンザが流行することがあり、今回も雨季の流行と考えられています。

(5)ヨーロッパ:フランスやイタリアで蚊媒介感染症が増加

今夏はヨーロッパで、蚊に媒介される感染症の国内感染例が多発しています(ヨーロッパCDC 25-8-22)。フランスでは地中海岸を中心に、8月中旬までにチクングニア熱の患者が156人、デング熱が11人、イタリアでもチクングニア熱が29人、デング熱が4人報告されています。さらにローマ近郊のラティナなどでは、ウエストナイル熱の患者が351人発生し、22人が死亡しました(英国National Travel Health Network Center 25-8-22)。ヨーロッパCDCは、温暖化により蚊が増えていることが患者数増加の原因との見解を出しています(ヨーロッパCDC 25-8-22)。

(6)米州:北米を中心に麻疹患者が増加

今年、米州では8月上旬までに麻疹の患者が1万人以上発生しました(米州保健機関 25-8-15)。この数は昨年同期の患者数の約30倍にのぼります。患者発生が多いのは北米の国々で、カナダが4500人、メキシコが3900人、米国が1300人となっています。