独立行政法人労働者健康福祉機構 東京産業保健推進センター
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「事務所型事業場におけるVDT労働衛生管理とノート型パソコンへの対応について」
主任研究者  
東京産業保健推進センター所長 佐々木 健雄
共同研究者  
東京産業保健推進センター産業保健相談員 野田 一雄
東京産業保健推進センター産業保健相談員 牧野 茂徳
東京産業保健推進センター産業保健相談員 伊東 一郎
聖マリアンナ医科大学教授 吉田 勝美
筑波大学医療短期大学部講師 中石 仁

1.目  的

VDT作業者および作業職場における労働衛生面の調査は過去にも種々なされており作業管理、作業時間管理、健康管理面で報告がなされている。その間、VDT作業にも 変化があり、端末がCRTから液晶、デスクトップ型からノート型へと増加の傾向が認められている。

また、作業者もいわゆるVDT作業のための労働衛生の指針で言われている専らVDT作業を専門に連続的に実施する作業形態区分Aの作業から、事務系全員参加型の作業形態BまたはCの作業者が増加するという変化を示している。

本調査報告は、事務所型事業場におけるVDT作業についてアンケート方式で実施しノート型パソコンにおける労働衛生面の特徴、問題点、対応等について調査分析した。

2.対象・方法

東京都内事業場および作業者個人を対象とし、1999年12月の1ヶ月間に実施した。
アンケートは事業場向けと作業者個人向けの2種類を作成した。

事業場向けアンケートは、東京都の中央・三田労働基準監督署管轄の労働基準協会会員事業所に直接アンケート用紙を送付し各事業場において記入の上返送を依頼した。

また1事業場についてそれぞれ1部の作業者個人向けアンケートを同封依頼した。さらに作業者個人向けアンケートについては、東京産業保健推進センターでの各種産業保健研修参加者に配布し、記入返送を依頼した。
            

配布は、中央署管轄1500部、三田署管轄750部、研修会参加者350部であった。

事業場向けアンケートの内容は、事業場の業種、従業員数、VDT作業者数(年齢別、男女別)、VDT使用台数等の基本的質問7項目とVDT労働衛生管理の質問21項目からなっている。

作業者個人向けは、性別、年齢、使用年数、業種等の個人属性にかかわる質問5項目、VDT機器利用状況についての質問23項目からなっている。 業務に主として用いているVDT機器についての質問は、ノート型を「ラップトップまたはノート型(A4以上)」と「ノート型(B5以下)またはミニノート型」に分けて回答を受けた。また「VDT作業環境についての自己評価」の10項目と「VDT作業についての自己評価」の拘束性、他の仕事と比較しての疲労、作業の緊張度、仕事での満足感は、いずれも5段階評価で回答を受けた。

3.結果および結論

(1)VDT作業者の有効回答は男性240名、女性164名、合計404名であった。

(2)男性では30−34歳が最も多く約20%を占め、30〜40歳代で約半数であった。女性では25−29歳が最も多く約31%を占め、20歳代が約半数であった。年齢が高くなるほどデスクトップ型機器の使用頻度が低下し、相対的にラップトップ・ノート型の使用頻度が高まる傾向が認められた。

(3)キーボードについては、デスクトップ型の90%が分離型、ラップトップ・ノート型の90%が一体型であった。肘の位置については、デスクトップ型で43%、ラップトップ・ノート型で50%ミニノート型で61%と小型の機種ほど調節可と答える者が多かった。

(4)ディスプレイ種類は、デスクトップ型では81%がCRT、ラップトップ・ノート型では92%がLCDであった。輝度・コントラストについては、ミニノート型での調整しないと答えた比率がやや大であった。画面の高さについての自覚では、デスクトップ型で15%がやや高いと答えたのに対し、ラップトップ・ノート型では10%強で低いと答えた。画面の距離の自覚についてはデスクトップ型51%、ラップトップ・ノート型61%、ミニノート型43%が不適当と答え、ラップトップ・ノート型での比率がやや大きかった。画面の見にくさについてはミニノート型では「良い」が4%で、デスクトップ型の11%、ラップトップ・ノート型の16%より少なかった。
     

(5)冬季の湿度については、デスクトップ型では40%、ラップトップ・ノート型では33%、ミニノート型では26%が悪いあるいはやや悪いと答え、機種による差異を認めた

(6)作業スペースについては、デスクトップ型では47%、ラップトップ・ノート型では37%、ミニノート型では30%が悪いあるいはやや悪いと答え、デスクトップ型での不満が多いという結果であった。

(7)疲労については、デスクトップ型では42%、ラップトップ型では39%、ミニノート型では47%が悪いあるいはやや悪いと答え、ミニノート型で悪いあるいはやや悪いと答えた割合が若干高かった。健診については、ミニノート型では他の機種に比べ、健診が「存在するが受けていない」とする者の比率が若干高かった。

(8)デスクトップ型からノート型に変えた者については、男女合計体では、40%が使いやすくなった、20%が使いにくくなったと答えた。また、明らかな年齢による差異は認めなかった。

(9)事業場を対象とした調査票は307の事業場から回答があった。事業場で使用するVDT機器は61%がデスクトップ型、30%がA4ノート型であった。労働衛生指針については、ほぼ遵守されている事業場30%、あまり遵守されていない事業場30%であった。VDT健診は61%、保健指導は58%が実施されておらず、適正視力の保健指導は50%があまり実施されていなかった。

4.ノート型パソコンのVDT労働に関する提言

ノート型パソコンの問題点として、従来、視線が低い位置にくるために、姿勢が前かがみになり、長時間の労働では疲労感、拘束感が強くなることが指摘されていた。

今回の調査はデスクトップ使用群とノート型使用群間で自覚感を見ても大きな差異は認められず、また、デスクトップ型からノート型へ機種変更した者についても、疲労感、拘束感について使いにくくなったという割合が高い傾向は認められなかった。

これには、作業者が順応していることか、ノート型パソコンで入力専門の業務をしている例は少ないことなどが要因として考えられる。

逆に、作業スペースについては、ノート型の方が作業条件が良くなると考えられていた、ノート型で明らかに使いやすくなるという結果は得られなかった。

事業場において、指針を踏まえた労働衛生教育や健診項目を考慮した健康診断があまり実施されていないことが明らかになった。

この両者は予防、早期発見、症状憎悪防止に直結することも多いので、機種別の特性を踏まえた教育を事業主、産業保健スタッフが積極的に展開していくことが必要であると思われた。


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