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海外感染症流行情報 2021年10月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

・全世界:新型コロナウイルスの流行状況

新型コロナウイルスの感染者数は10月になり世界全体で減少傾向にあります(WHO Corona virus disease 2021-10-19)。しかし、ヨーロッパではロシアや東欧で感染者数が増加しており、予防対策の強化がとられています。また、英国やドイツなどでも感染者が増加傾向にあります。11月以降、北半球の温帯地域は冬を迎えることで、世界的な流行再燃が危惧されています。これを阻止するため、欧米諸国などではワクチンの追加接種が始まりました。
日本では第5波が収束し、10月末からは多くの予防措置が解除されます。この後、海外渡航に関する制限も緩和されることが予想されており、政府の発表を注視していく必要があります。

・全世界:季節性インフルエンザの流行

北半球の温帯地域でB型インフルエンザの患者数が昨年よりも増えています(WHO Influenza 2021-10-11)。また、中米、熱帯アフリカ、南アジアなどの熱帯地域でも、B型の患者が散発しています。ヨーロッパではクロアチアでA(H3)型の小規模な流行が起きている模様です(ECDC Communicable disease threat 2021-10-22)。今後、北半球の温帯地域でインフルエンザの流行が拡大するかは不明ですが、新型コロナの流行と重なることを避けるため、本格的な冬になる前にインフルエンザワクチンの接種を受けておくことを推奨します。

・アジア:中国でH5N6型鳥インフルエンザ患者が増加

中国ではH5N6型の鳥インフルエンザ患者が増加しており、今年は10月中旬までに患者数が24人にのぼっています(Outbreak News Today 2021-10-18)。ここ1か月間では江西省、湖南省などで4人の患者が発生し、いずれも重症でした。H5N6型の感染者は中国などで2014年から48人確認されており、その半数が今年発生しています。患者の大多数は市場などで家禽類との接触歴がありました。

・アジア:インド南部でジカウイルスの流行が発生

インド南部のケララ州で7月にジカウイルス感染症の患者が初めて確認されました(WHO outbreak news 2021-10-14)。その後、患者周囲の住民調査などで50人以上の感染が明らかになっていますが、小頭症の発生はみられていません。ジカウイルス感染症は蚊が媒介するウイルス疾患で、妊婦が感染すると胎児に小頭症などを起こすことがあります。インドでは北部での流行が既に確認されていましたが、南部では今回の報告が初めてになります。

・アフリカ:コンゴでのエボラ出血熱と髄膜炎菌感染症の流行

コンゴ民主共和国の北東部にある北キブ州で、10月にエボラ出血熱の患者が5人発生し、3人が死亡しました(WHO outbreak news 2021-10-10, WHO Africa 2021-10-18)。この地域では今年2月にも流行が発生しており、5月に終息宣言が出されたばかりでした。 また、同国北部のキサンガニ周辺では9月から髄膜炎菌感染症の大規模な流行が発生しています(Outbreak News Today 2021-10-12)。10月初旬までに約1400人の患者が発生し、192人が死亡しました。この病気は飛沫感染を起こすもので、予防にはワクチン接種が有効です。  

・北米:アフガニスタンからの入国者に麻疹患者が多発

米国のバージニア州で麻疹患者が20人発生しました(Outbreak News Today 2021-10-12)。いずれもアフガニスタンからの入国者で二次感染は起きていません。アフガニスタンでは麻疹などのワクチン接種が十分に行われおらず、流行が続いています。最近の政情不安で同国から海外に避難する人も増えていますが、麻疹など健康面に関する注意が必要です。