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海外感染症流行情報 2021年8月 (東京医科大学病院 渡航者医療センター)

・全世界:新型コロナウイルスの流行状況

新型コロナウイルスの累積感染者数は8月下旬までに約2億1000万人、死亡者数は約440万人にのぼっています(米国ジョンズ・ホプキンス大学 2021-8-24)。8月はデルタ株の拡大により世界的に感染者数が増加しました(WHO Corona virus disease 2021-7-20)。地域別では今まで感染者数の少なかった東南アジアで増えており、とくにインドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムなどで多くなっています。また、ヨーロッパや北米でも再燃がみられています。デルタ株は感染力が強いとともに、重症化も起こしやすい可能性があります。ワクチンについては発症予防効果がやや低下するものの、重症化は防げるとする報告が多くみられます。
なお、日本政府は海外在留邦人を対象に、一時帰国によるワクチン接種を8月から開始しています。使用するのはファイザー社製のワクチンで、2回接種(3週間隔)が必要です。詳細については外務省の下記ホームページをご参照ください。
外務省 海外安全ホームページ|新型コロナウイルスに係る日本からの渡航者・日本人に対する各国・地域の入国制限措置及び入国に際しての条件・行動制限措置 (mofa.go.jp)
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/vaccine.html

・アジア:中国とインドで鳥インフルエンザ患者が発生

中国では最近1か月間にH5N6型の鳥インフルエンザ患者が5人発生しました(香港衛生局 2021-8-19, 20)。今回、患者が確認されたのは、広西省、四川省、湖南省、広東省と中国南部が多くなっています。H5N6型の患者は2014年以来、中国で40人確認されており、このうち2021年の発生数は16人と増加傾向にあります。一方、インド北部のHaryana州で、6月にH5N1型の鳥インフルエンザ患者が1名発生しました(WHO 2021-8-16)。同国でのH5N1型の患者発生は初めてです。H5亜型の鳥インフルエンザウイルスは高病原性であるため、今後、十分な監視が必要です。

・アジア:東南アジアでのデング熱流行状況

東南アジア各国のデング熱患者数は例年よりも少なくなっています(WHO西太平洋 2021-8-12)。多くの国が雨期に入っていますが、患者数の増加はみられていません。現地に滞在する際は、引き続き蚊に刺されない注意をしてください。

・アフリカ:西アフリカでのエボラ熱、マールブルグ熱の発生

コートジボアールの首都アビジャンで8月中旬にエボラ熱の患者が1名発生しました(WHO Africa 2021-8-14)。同国では1994年以来のエボラ熱患者の発生になります。この患者(18歳女性)は隣接するギニアから陸路で移動してきたことが明らかになっています。ギニアでは今年1月からエボラ熱の流行が発生し、6月中旬に流行終息宣言が出されたばかりでした。なお、ギニアでは7月下旬、南西部でマールブルグ熱の患者が1名発生しました(WHO 2021-8-9)。マールブルグ熱の原因となるウイルスは、エボラ熱の原因と同様にフィロウイルス科に属します。本例はギニアで初めてのマールブルグ熱患者で、感染経路は今のこところ不明です。

・南半球:季節性インフルエンザの流行はみられず

南半球の温帯地域(オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン、南アフリカなど)は冬の季節を迎えていますが、季節性インフルエンザの流行は今年もみられていません(WHO Influenza 2021-8-16)。これは新型コロナウイルスの流行により、国際的な人の移動が制限されていることや、飛沫感染対策が効を奏しているためと考えられています。